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熊本地震の農林水産被害1,613億円——その過半は水路・ため池などの農業用施設

令和8年熊本地震の農林水産関係の被害額は、9月17日時点で1,613.5億円です。このうち900.7億円は水路・ため池などの農業用施設で、田畑そのものは62.0億円でした。農林水産省の資料をもとに内訳と復旧・支援の動きを整理し、倉吉で営農する立場から、平時にできる備えをまとめます。

水田の横を流れるコンクリートの水路。壁にひびが入り、継ぎ目がずれて水が漏れている

2026年7月28日16時27分ごろに起きた令和8年熊本地震について、農林水産省は農林水産関係の被害額を1,613.5億円とまとめました(9月17日14時時点)。

金額の内訳を見ると、いちばん大きいのは田畑そのものではなく、水路やため池などの農業用施設です。この記事では、農林水産省と九州農政局の資料をもとに被害の中身と復旧・支援の動きを整理し、鳥取県倉吉市で営農する立場から、平時にできる備えをまとめます。


1. 1,613億円の内訳

結論:被害の過半は、水路・ため池などの農業用施設

農林水産関係の被害額 1,613.5億円の内訳(報告のあった7県の合計)

農業用施設等だけで900.7億円と、全体の約56%です。田畑そのもの(農地)は62.0億円でした。

農地と農業用施設等を合わせると962.7億円(1万5,083か所)です。各区分は四捨五入のため、合計と一致しない場合があります。

出典:農林水産省「令和8年熊本地震に係る農林水産関係の被害状況」(令和8年9月17日14時00分現在・PDF)

農地・農業用施設の被害は、合わせて962.7億円・1万5,083か所です。その内訳は次のとおりです。

  • 農業用施設等:900.7億円・10,017か所(水路、ため池など)
  • 農地:62.0億円・5,066か所(田畑そのもの)

田畑の被害は箇所数では3分の1を占めますが、金額では1割に届きません。お金がかかっているのは、水を運ぶ側の施設です。

次に大きいのが、共同利用施設の355.3億円・66件です。共同利用施設は、選果場や乾燥施設、倉庫など、JAなどが地域で共同で使う施設を指します。農林水産省の資料には、施設の種類ごとの内訳は載っていません。

このほか、農業用ハウス・倉庫・畜産施設・農業機械の被害が182.0億円・2,500件ありました。


2. 被害額は、いつ・どの範囲の数字かで変わる

報道に出る被害額は、集計した時点と範囲によって違います。

  • 熊本県の速報(8月25日時点):県内の農林水産関係で約1,102億円、うち農地・農業用施設は約786.8億円。2016年の熊本地震(約1,826億円)に次いで、過去2番目の規模です。
  • 農林水産省の集計(9月17日14時時点):熊本県を含む7県の報告の合計で1,613.5億円。

農林水産省の資料も「速報であり、数値等は今後も変わることがある」としています。数字を比べるときは、いつ、どの範囲の集計かを先に確かめます。


3. 水はどう止まり、どう戻っているか

ため池

7月28日の地震のあと、熊本県では防災重点農業用ため池446か所をすべて点検し、56か所で異常が見つかりました。ため池は田に水を送る水源で、堤が傷むと決壊のおそれも出ます。

八代平野の幹線水路

熊本県八代市などに水を送る、国営かんがい排水事業 八代平野地区の幹線水路も被災しました。九州農政局は、水路を直しきる前に、ポンプと給水車で水を届けています。

八代平野の幹線水路:通水を戻すまでの経過

国営かんがい排水事業 八代平野地区(熊本県八代市など)

九州農政局は、壊れた幹線水路を直しきる前に、ポンプと給水車でまず水を届けました。

本格的な復旧は、査定と工事を経て、これから進みます。

出典:九州農政局「被災農地における通水のための農業用水用ポンプの設置について」(令和8年8月2日)、同「八代平野地区の幹線水路の応急復旧状況について」(令和8年9月1日)

幹線水路が止まると、その先の田畑はどこも水が来なくなります。家や畑が無事でも、水が来なければ作付けはできません。


4. 国の支援の動き

農林水産省が公表している主な支援策は、次のとおりです。

日付内容
7月29〜30日金融機関に、被害を受けた農林漁業者への資金の融通と、返済の猶予を依頼。共済には、損害評価と共済金の早期支払い、収入保険のつなぎ融資を依頼
8月3日「大規模災害時の災害査定の効率化」を適用。熊本県の農地・農業用施設などで、現地に行かず書類で済ませる査定の範囲を広げ、図面も簡単にする
8月7日激甚災害に指定する政令を閣議決定。農地・農業用施設の復旧の国の補助率を上げる(過去5年の平均で、農地は86%→97%)。JAなどの共同利用施設は、通常20%→50%(大臣が告示した市町村は90%)
8月27日「被災者の生活となりわい支援のためのパッケージ」を取りまとめ

補助率が上がっても、残りの負担がなくなるわけではありません。地元の負担をどう分けるかは、市町村や土地改良区によって違います。


5. 金額の大きさと、直す順番は別

被害額が大きい施設から直すとは限りません。現場で先に確かめるのは、次の順だと筆者は考えています。

現場で先に確かめるのは、人の安全・水・出荷の順

被害額の大きさと、直す順番は別

実際にどこから直すかは、土地改良区・市町村・JA・受益農家の話し合いで決まります。この図は筆者の整理で、熊本の復旧計画ではありません。

出典:筆者の整理(農林水産省の被害状況PDFと九州農政局の発表をもとに作成)

田だけ直しても、その田に水を送る水路が止まっていれば作付けできません。選果場が止まれば、収穫できても出荷できません。どの水路から直すかは、土地改良区・市町村・JA・受益農家が、水が来ない面積や作付けまでの日数を見ながら話し合って決めます。


6. 平時にできる4つの備え

倉吉で営農する立場から、地震の前にできることをまとめました。

1. 連絡先を紙に書いておく

停電やスマホの電池切れでも見られるように、次の連絡先を紙1枚にまとめ、作業小屋や軽トラに置きます。

  • 土地改良区や水利組合(用水・排水の担当)
  • JA(営農と施設の担当)
  • 市町村(農林と防災の担当)
  • NOSAI(農業共済)

水路の漏水やあふれを見つけたときに、誰に知らせるかの順も書いておきます。

2. 自分の田畑の水が、どこから来ているかを知る

自分の田畑の水が、どのため池や取水口から、どの水路を通って来ているかを地図で確かめます。八代平野でも、まずポンプと給水車で水を届けました。水路が止まったときに、ポンプやホース、井戸から水を引けるかも見ておきます。

3. 共済と収入保険の範囲を確かめる

田畑や水路の被害は、共済ではなく、国の補助を受けた災害復旧事業で直すのが基本です。ハウスや倉庫、農業機械、地震による減収がどこまで補償されるかは、加入している共済と収入保険の内容で確かめます。

4. 選果場が止まったときの出荷を、JAと相談しておく

選果場や乾燥施設が止まったとき、個人での出荷や契約先への持ち込みが必要になるかもしれません。品質の基準や産地表示のルールがあるので、どこまでできるかを平時にJAや部会と相談しておきます。


まとめ

令和8年熊本地震の農林水産関係の被害額は、9月17日時点で1,613.5億円です。このうち900.7億円が水路やため池などの農業用施設で、田畑そのものは62.0億円でした。

八代平野では、幹線水路を直しきる前に、ポンプと給水車でまず水を届け、8月8日に通水を再開しました。国は激甚災害の指定で、農地や共同利用施設の復旧の補助率を上げています。

田畑が無事でも、水と出荷が止まれば営農は続きません。まずは、自分の田畑の水がどこから来ているかを地図で確かめ、連絡先を紙に書き出すところから始めてみてください。


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