ブログ

茎枯病に強いアスパラガス新品種「あすたまJ」は2028年ごろ提供予定——それまでに今の品種でできる茎枯病対策

農研機構・香川県・東北大学・九州大学が育てた「あすたまJ」は、茎枯病に強い世界初のアスパラガス品種です。台木ではなく、そのまま植える品種で、生産者への提供は2028年ごろの予定です。わかっている特徴と、それまでの間に今の品種でできる茎枯病対策を、県の防除マニュアルをもとにまとめます。

露地のアスパラガス畑。稲わらを敷いた畝から若茎が出て、奥には支柱とひもで支えた親茎が並ぶ

アスパラガスは一度植えると、ふつう10年以上同じ株で収穫を続けます。茎枯病が出ると、その影響が何年も続きます。国内のアスパラガス畑の約80%は露地で、茎枯病は露地でいちばん深刻な病気です。最近は高温や長雨、豪雨で被害が増えています。

これまでのアスパラガスの品種には、茎枯病に実用的な強さを持つものがありませんでした。そこで農研機構・香川県・東北大学・九州大学が、野生の近縁種と交雑して育てたのが「あすたまJ」です。

先に結論を書きます。

  • 「あすたまJ」は台木ではなく、そのまま植える品種です。
  • 生産者への原種苗の提供は2028年(令和10年)ごろの予定で、今はまだ買えません。
  • それまでは、今の品種で雨よけ・側枝の管理・残さの処分を組み合わせるのが基本です。
  1. 台木ではなく、そのまま植える品種

    品種

    アスパラガスと日本固有種ハマタマボウキを交雑して育てた、世界初の茎枯病抵抗性品種です。2023年3月に品種登録を出願しました(出願番号第36754号)。

  2. 殺菌剤を使わない露地でも、収量が残った

    抵抗性

    茎枯病が多発した露地の春どりで、殺菌剤を散布しない条件でも高い収量でした。同じ条件で、従来品種の収量はほぼゼロでした。

  3. 若茎は細く、本数が多い

    若茎

    細い若茎がたくさん取れる品種です。太いほど高く売れる今の規格では、単価が低くなる懸念があり、細い若茎の売り先づくりが研究されています。

  4. 生産者への種苗の提供は、まだ先

    2028年ごろ

    現地での実証試験を進め、2028年(令和10年)ごろに原種苗の提供を始める予定です。茎枯病以外の病気への強さは未検討で、害虫の防除は必要です。


1. 茎枯病はどう広がるか

茎枯病は、カビの一種(Phomopsis asparagi)が起こす病気です。菌は畑に残った茎の残さで冬を越し、雨のたびに新しい茎へ移ります。

結論:菌は残さで冬を越し、雨で茎に移る

伝染源を減らし、茎を雨と泥から離す

茎枯病の菌は、前の年の茎の残さに付いたまま土の中で冬を越します。雨や水やりで胞子が飛び、新しい茎に移ります。

親茎が早く枯れると、翌年の春どりまで減る

影響

立てた親茎が感染すると、夏秋どりの収量が大きく落ちます。根に蓄える養分も減るので、翌年の春どりを早めに切り上げることになります。

前の年に発病が多かった畑では、残さの焼却や薬剤散布だけでは十分に効かないことがあります。

出典:長崎県農林技術開発センター「アスパラガス茎枯病 防除マニュアル」(2017年)、長野県「アスパラガス収量性向上マニュアル(改訂版)」

対策は、この流れのどこかを切ることです。冬のうちに残さを減らす、雨と泥はねから茎を離す、病気の茎をすぐ畑の外に出す、の3つになります。


2. 「あすたまJ」でわかっていること

野生種ハマタマボウキとの交雑

親の片方は、アスパラガスと同じ仲間の日本固有種「ハマタマボウキ」です。環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類に入っている植物です。

アスパラガスとかけ合わせられることを東北大学が、茎枯病に強いことを九州大学が明らかにしました。そこから両方を交雑して品種にしました。名前は、アスパラガスの「アス」とハマタマボウキの「タマ」に、日本(Japan)の「J」をつけたものです。

試験の結果

  • 苗に菌を付けた試験で、従来品種より病斑の広がりが遅くなりました。
  • 茎枯病が出る露地の畑で、殺菌剤を一切まかずに育てました。従来品種は地上部がほぼ枯れましたが、あすたまJは何年も元気に育ちました。
  • 同じ条件の春どりで、従来品種の収量はほぼゼロでしたが、あすたまJは高い収量でした。

これまで茎枯病のためにハウスで作るのが一般的だった温暖地でも、露地で作れるようになると期待されています。

導入前に知っておきたいこと

  • 若茎が細い:細い若茎がそろってたくさん取れる品種です。太いほど高い今の規格では、単価が低くなる懸念があります。研究グループは、細い若茎の売り方を含めた需要づくりに取り組んでいます。
  • ほかの病気と害虫:茎枯病以外の病気への強さは、まだ調べられていません。害虫の防除は必要です。
  • 手に入る時期:現地での実証試験を進め、2028年ごろに原種苗の提供を始める予定です。

細い若茎をどう売るかは、出荷先や部会の規格で変わります。提供が始まる前に、JAや出荷先と相談しておくと判断しやすくなります。


3. 今の品種で効く対策は、雨よけと側枝の管理

岡山県農業研究所は、県内37か所の畑で実際に行われている対策を調べ、どれが茎枯病の発生をよく抑えているかを分析しました。効果が大きかった順に並べると、次のとおりです。

  1. 雨よけ

    1位

    簡易な雨よけか、ハウスで雨を防ぎます。発生を抑える効果がいちばん大きい方法でした。

  2. 側枝の管理

    2位

    地際から50〜60cmまでの側枝を取るか、伸びて垂れ下がった側枝を切り詰めます。畝の横10cmに立って、株元が見える状態が目安です。

  3. 茎の処理

    3位

    収穫期間中に出た余分な親茎や病気の茎を処理し、その残さを畑の中にも周りにも残さず持ち出します。

  4. 立茎の密度

    4位

    立てる茎を1㎡あたり12本以下に抑え、株の間の風通しを保ちます。

  5. 畝と通路の焼却

    5位

    畝の表面と通路を焼きます。最初の発生を遅らせる効果で、その後の広がりは止められないため、順位は下がりました。

この分析では、組み合わせる対策の数が多い畑ほど、病気の茎が少なくなりました。どれか1つに頼るより、できるものを重ねるほうが効きます。

雨よけをしていても、水やりで胞子は飛びます。福岡県の試験では、雨よけ栽培でも、茎や葉に水がかからない方法で灌水するよう注意しています。


4. 1年の作業の流れ

長崎県農林技術開発センターの防除マニュアルをもとに、季節ごとの作業を並べました。長野県のマニュアルも、伝染源をなくすこと、雨よけ、時期を合わせた薬剤散布を対策の柱にしています。

結論:冬に伝染源を減らし、立茎期に一番守る

半促成長期どりの例。露地も考え方は同じ

長崎県は、冬の残さ処理と、立茎開始からの定期的な薬剤防除を組み合わせた体系で、茎枯病の発病を大きく抑えています。

薬液は茎や葉だけでなく、菌が多くいる親茎の株元にもかかるように散布します。使う薬剤は、登録内容とラベルの注意事項に従ってください。

出典:長崎県農林技術開発センター「アスパラガス茎枯病 防除マニュアル」(2017年)、九州沖縄農業研究センター 研究成果情報(長崎県)、長野県「アスパラガス収量性向上マニュアル(改訂版)」

露地では、立茎を始めると雨が直接当たります。長野県のマニュアルでは、雨の少ない時期に立茎を始めること、立茎前の培土やわら・もみ殻のマルチで残った茎を覆い、胞子が飛ぶのを抑えることを勧めています。

前の年に病気が多かった畑ほど、冬の残茎の除去と焼却を丁寧に行います。長崎県のマニュアルでも、前年の発病が多い畑では、焼却や薬剤散布だけでは十分に効かないことがあるとしています。


まとめ

「あすたまJ」は、茎枯病に強い世界初のアスパラガス品種です。台木ではなく、そのまま植える品種で、生産者への提供は2028年ごろの予定です。若茎が細いので、売り先の相談が先に必要になります。

それまでは、今の品種で対策を重ねます。岡山県の分析では、雨よけと側枝の管理の効果が大きく、組み合わせる数が多いほど発病が減りました。冬は残茎を抜いて畝の表面を焼き、立茎期は雨の少ない時期に立てて薬剤で守り、病気の茎は見つけしだい畑の外に出します。

まずは今年の冬、残茎を地表から3〜5cm下で切り取るところから始めてみてください。


出典・参考リンク