FarmDroid FD20は、デンマークのFarmDroid社がつくる、播種と除草を1台で行う太陽光で動く畑のロボットです。自分で種を播くときに1粒ずつ位置を記録し、その位置を避けて除草します。カメラで作物と雑草を見分ける方式ではないので、作物が芽を出す前から除草を始められます。
先に要点を書きます。
- 仕組み上、FD20が自分で種を播いた畑が前提です。苗を植える作型には使えません。
- 測位の精度8mm、標準重量1,250kg、1日最大6ha、作物・季節あたり20ha前後が推奨、というのがメーカーの公表値です。
- 発電量は季節で変わります。メーカー自身が「3月初めは1日9時間ほどの稼働」と書いています。
- 日本では株式会社アグリフォレストマシーンが代理店契約を結んでいます(農機新聞 2024年12月3日付け)。北海道の農場が国の補助事業を使って導入した例もあります。価格は公開されていません。
FarmDroid社は製品ページで、特に有機農業では除草が手間とお金のかかる手作業になりやすく、人手不足で続けにくいことを開発の動機に挙げています。
1. 仕組み:播いた位置を覚えて、その周りを削る
FD20は「見て判断する」のではなく、「自分が播いた場所を覚えている」ことを使って除草します。
播種:1粒ずつ位置を記録する
- 3Dプリントでつくった種子ディスクが、決めた数の種を送り出します。ロボットはそれを8mmの精度で土に置きます。
- 種が詰まったときや種が切れたときは、ロボットが止まってスマートフォンに知らせます。
- 位置は、RTK-GPSで測ります。RTKは、畑の近くに置いた基地局の補正情報を使って、衛星の位置をより正確に出す方式です。FD20では、専用の基地局を圃場から10km以内に置き、携帯回線でつなぎます。
ブラインド除草:芽が出る前に除草する
播種の直後、作物が芽を出す前に行う除草を、メーカーは「ブラインド除草」と呼んでいます。カメラで作物を見分ける方式は、作物が地上に見えないと雑草と区別できません。FD20は種の位置を知っているので、芽が出る前でも作業できます。
畝間と株間の機械除草
- 畝間(列と列の間):直径4mmの除草ワイヤーを使います。1本で幅20cmをカバーします。条間に合わせて、切削ディスクやL字形の刃(L-share)などを組み合わせます。
- 株間(列の中の株と株の間):電動の除草ナイフが列の中に出たり入ったりします。ナイフで雑草の根を切り、先端の小さなフックで土から抜きます。株間除草には、株間10cm以上が必要です。
設定どおりに作業できないことが起きると、ロボットは自分で止まり、農家に知らせます。
2. メーカー公表の主な仕様
| 項目 | メーカーの公表値 |
|---|---|
| 測位の精度 | RTK-GPSで8mm |
| 標準重量 | 1,250kg(オプション込みで最大1,800kg) |
| 作業幅 | 最大3.5m |
| 列数・条間 | 2〜12列、条間22.5cmから |
| 播ける種の大きさ | 0.5〜14mm |
| 速度 | 自動運転で最高950m/h(時速0.95km) |
| 1日の作業面積 | 最大6ha(950m/hで走ったとき) |
| 推奨面積 | 作物・季節あたり20ha前後 |
| 太陽光パネル | 4枚、1.6kWp |
| 電池 | 6kWh(リン酸鉄リチウム電池2個) |
| 傾斜 | 標準の前輪で進行方向8%・左右5%まで |
| 対応作物 | 100種類以上 |
仕様は、2026年版ファクトシート(モデル名 FD20 2025 v2.6)、製品ページ、2025年Q4版ブロシュールによります。推奨面積は資料によって違い、製品ページは「作物・季節あたり20ha前後」、ブロシュールは「作期あたり30haまで」です。
対応作物として名前が挙がっているのは、ナタネ、チコリ、キャベツ、タマネギ、ホウレンソウ、テンサイ、ダイズ、インゲン、ヒヨコマメ、トウモロコシなどです。
3. 日本の畑で導入する前に確かめること
① FD20で直播きする作型か
FD20は、自分で播いた種の位置をもとに除草します。苗を植える作型では使えません。
対応作物の一覧にある作物でも、日本の品種や作型で使えるかは別の話です。FarmDroid社は、種子の試験室で新しい作物との相性を農家と一緒に試しています。導入前に、育てたい作物と品種で試験済みかを代理店に確認してください。
株間除草のナイフは、株間10cm以上が条件です。株間がそれより狭い作型では、株間の除草に使えません。
② 畑の傾斜と土の状態
標準の前輪では、進行方向の傾斜8%、左右の傾斜5%までが推奨です。8%は、100m進むと8m上がる勾配です。前輪を自動で傾ける「Active Front Wheel」を付けると、どちらも10%まで推奨されています。
メーカーは、この上限が土の種類や湿り具合で変わると注記しています。
③ 日照と電力
メーカーの説明では、平均の消費電力は約550Wです。発電量と稼働時間の目安は次のとおりです。
- 早春:1日の発電は約5kWhで、3月初めの稼働は約9時間
- 晩春〜夏:1日の発電は最大約13kWhで、5月は条件がよければ最大24時間
資料には、どの地域の日照でこの数字になるかは書かれていません。日本の梅雨や秋雨の時期にどれだけ動けるかも、資料にはありません。
曇りの日が多い地域向けに、オプションの「Power Bank」があります。太陽光か自宅で充電でき、追加で約10〜12時間動かせる、とメーカーは説明しています。
メーカーの事例では、オランダの農家が12haのチコリを4日半で播き終えました。農家は、夜も止まらずに走り続けたと話しています。
④ 速度と面積
精度を保つため、FD20は450〜950m/hのゆっくりした速さで走ります。1日の作業面積は最大6haです。
1台でこなせない面積では、複数台で畑を分け合い、1台が播種、もう1台が除草をする使い方が案内されています。デンマークの有機農場Tjele Godsは、93haの飼料用ビートを管理するため、2025年のシーズンに5台を使っています。
⑤ 基地局と通信
RTK-GPSの基地局を、圃場から10km以内に置く必要があります。ロボットとアプリは携帯回線でつながります。圃場で携帯回線が使えるかも、事前に確かめてください。
4. 価格と費用対効果
FD20の製品ページに価格は載っていません。構成は、作物や畑に合わせてメーカーや代理店と相談して決めます。
メーカーは利点の一つに「投資回収は最短2年」を挙げています。ただし、前提の条件は書かれていません。
数字の出ている事例は、テンサイ農家1件です。FD20を入れて手取り除草を大きく減らし、費用が80%減ったとメーカーは紹介しています(2025年Q1版ブロシュール)。
日本の人件費や作付けで何年で元が取れるかを示した公表資料は、見つかりませんでした。検討するときは、いまの手取り除草の延べ時間と人件費を記録しておくと、代理店の見積もりと並べて比べられます。
5. 日本での入手と導入例
- 代理店:株式会社アグリフォレストマシーンが、FarmDroid社と代理店契約を結びました(農機新聞 2024年12月3日付け)。同じ記事によると、FarmDroid社は2018年創業で、世界で550台を販売しています。
- 導入例:北海道音更町のとかち河田ファームが、令和7年度の「みどりの食料システム戦略総合対策(緊急対策)事業補助金」を使ってFD20を導入した、と2026年4月9日に報告しています。同農場は栽培マニュアルも公開しています。
- 国の制度:スマート農業技術活用促進法の計画の認定を受けると、金融の支援措置を受けられます。補助事業の審査では、ポイント加算などの優遇措置が設けられています(農林水産省)。
使える補助事業や補助率は、年度や都道府県によって違います。県や市町村の農政の窓口で確認してください。
6. 導入の流れ(メーカーの説明)
- 構成の相談:作物・条間・土・傾斜に合わせて、後輪の幅(160〜230cm)、前輪の種類、列数を決めます。
- 納品と基地局の設置:代理店と一緒に開梱し、GPSの基地局を圃場から10km以内に置きます。
- 圃場の登録:専用の「Field Setup Tool」を持って畑を回り、角と障害物を記録して、アプリからロボットに送ります。
- 播種:種を入れ、播く深さと株間を設定して播きます。
- ブラインド除草:播種の直後、作物が芽を出す前に除草します。
- 機械除草:株にどこまで近づけるかを調整し、畝間と株間を除草します。
- シーズン中のサポート:メーカーと代理店が、遠隔での確認と保守を行います。
まとめ
- FD20は、自分で播いた種の位置を8mmの精度で記録し、その位置を避けて畝間と株間を機械で除草します。芽が出る前から除草できます。
- 前提は、FD20で直播きする作型と、株間10cm以上です。傾斜は標準で進行方向8%・左右5%までです。
- 発電量は季節で変わり、早春は1日9時間ほどの稼働です。日本の梅雨時期の稼働データは公表されていません。
- 価格は非公開です。日本では代理店があり、補助事業を使った導入例があります。
出典・参考リンク
- FarmDroid:FarmDroid FD20 | Autonomous Farming Robot for Precision Agriculture
- FarmDroid:FARMDROID FD20 AUTOMATIC SEEDING & WEED CONTROL(2026年版ファクトシート・PDF)
- FarmDroid:AUTOMATIC SEEDING, WEEDING AND MICROSPRAYING ROBOT(2025年Q4版ブロシュール・PDF)
- FarmDroid:AUTOMATIC SEEDING, WEEDING AND MICROSPRAYING ROBOT(2025年Q1版ブロシュール・PDF)
- 週刊「農機新聞」:アグリフォレストマシーン、デンマークのスタートアップと代理店契約を締結
- とかち河田ファーム:みどり戦略の補助事業を活用した自走播種・除草ロボットの導入について
- 農林水産省:スマート農業技術活用促進法について