鳥取県のスイカはハウスとトンネルで作ります。定植から受粉までに、わき芽とりとつる引きの整枝作業を2〜3回行います。この作業は手間と時間がかかります。
鳥取県園芸試験場は、つる引きをしない「無つる引き栽培」を2015年から3年かけて開発しました。結論は次の3つです。
- 整枝・つる管理の作業時間は、慣行より11〜35%減る
- 果実の品質と収量は、慣行と同等
- 2回目のわき芽とりを省く方法と組み合わせると、30%減る
ただし、作業のやり方を理解していないと時間が減らないこともあります。県は平成30年度の『新しい技術』第56集で、この方法を「普及に移す新しい技術」として出しています。普及の対象は県内全域のスイカ栽培です。
1. 無つる引き栽培とは
わき芽をとりながら、つるを畝と平行に流し、そのまま受粉まで進める方法です(技術の資料)。つる先は空いた場所へ自然に広がるので、その性質を使います。
ことばを先に説明します。
- わき芽とり:仕立てるつる以外から出る芽を取る作業です。
- 子づる4本・2果どり:子づるを4本残し、1株から2果を収穫する仕立て方です。試験はすべてこの仕立てで行いました。
- 省力整枝:わき芽とりの一部を省く方法です。この試験では、2回目のつる管理でわき芽をとりませんでした。
- 裾換気:トンネルの裾を開けて換気することです。
2017年の慣行区では、つる管理の時間の4分の3がわき芽とりでした。
慣行のつる管理は、4分の3がわき芽とり
慣行区の整枝・つる管理の作業時間の内訳(2017年)
つる引きは全体の26%です。資料は、作業を大きく減らすには、わき芽とりも減らす必要があるとしています。
- わき芽とり 74%
- つる引き 26%
出典:鳥取県「新しい技術」第56集(平成30年度)「スイカのトンネル栽培における整枝作業の改善~無つる引き栽培法による省力化~」
そこで試験場は、無つる引きとわき芽とりの省略を組み合わせる方法も試しました(3章)。
2. 作業時間:11〜35%減。ただし作業者で差
試験は、幅2m・長さ20mのトンネルで行いました。慣行区は畝の端から80cmに植え、わき芽とりとつる引きを行いました。無つる引き区は、2015年が40cm、2016〜2017年が60cmの位置に植えています。
結論:慣行より11〜35%短い。ただし作業者で差が出た
無つる引き区の整枝・つる管理の作業時間(各作業者の慣行区=100)
棒が短いほど作業時間が短い、という意味です。2016年の作業者Cは105で、慣行より時間がかかりました。本人は「つる先側からの作業に不慣れで、手間取った」と評価しています。
2015年は畝の端から40cm、2016〜2017年は60cmに定植しています(慣行区はいずれも80cm)。2017年の作業者Gは作業時間を調べていません。
出典:鳥取県「新しい技術」第56集(平成30年度)「スイカのトンネル栽培における整枝作業の改善~無つる引き栽培法による省力化~」(表2・表3、トンネル幅2m・長さ20m)
2015年は、160分が104分になり、約35%減りました。2016〜2017年は試験場の職員3人がそれぞれ作業し、1人ずつ慣行区と比べています。
2016年の作業者AとBは「無つる引き区のほうが作業しやすかった」と答えました。作業者Cは、慣行より時間がかかっています。2017年は作業者D・Fとも時間が減りましたが、「つるが茂った状態では作業しにくい」という声が出ました。
資料は、作業者が方法に慣れることと、作業を遅らせないことが大事だとまとめています。
3. わき芽とりも省くと30%減
2017年は、無つる引きと省力整枝を組み合わせた区も設けました。
わき芽とりの省略と組み合わせると30%減
整枝・つる管理の作業時間(分/トンネル20m、2017年)
省力整枝は、2回目のつる管理でわき芽をとらない方法です。無つる引きだけでは16%減、組み合わせると30%減でした。果重・糖度・空洞果は、どの区も差がありませんでした。
出典:鳥取県「新しい技術」第56集(平成30年度)「スイカのトンネル栽培における整枝作業の改善~無つる引き栽培法による省力化~」(表4、品種‘筑波の香’)
無つる引きだけでは16%減でした。わき芽とりの省略を足すと30%減です。資料は、組み合わせると削減の効果が大きいとしています。
マニュアルのQ&Aは、省力整枝のやり方の例を次のように挙げています。
- 2回目のつる管理では、わき芽をとらずに、つるを横に置く。
- 3回目に、目印棒の近くまで芽かきをする。目印棒より先に伸びた部分が対象です。
- とらなかったわき芽は、トンネルの外へ向けて置く。中でかぶさるものは、手で外へ出す。
4. 果重・糖度・空洞果は慣行と同等
どの年も、無つる引き区の果重・糖度・空洞果は慣行区と同等でした。
表の数字は、左が慣行区、右が無つる引き区です。果重は平均、糖度は果実の中心部のBrix(%)です。
| 試験 | 果重(kg) | 糖度 |
|---|---|---|
| 2015年 | 9.8/10.3 | 12.2/12.4 |
| 2016年 | 10.1/10.1 | 12.5/12.7 |
| 2017年 | 10.6/10.5 | 12.5/12.4 |
| 2017年 組合せ試験 | 11.4/11.1 | 13.1/13.3 |
2016年と2017年は、作業者3人の平均で、品種は‘祭りばやしRG’です。2015年と組合せ試験の品種は‘筑波の香’です。台木はすべて‘かちどき2号’でした。出典は技術の資料の表2〜表4です。
2015年は、果重が慣行の9.8kgに対して10.3kgで、資料は「同等以上」と書いています。糖度と空洞果には差がありませんでした。
2015年の初期生育では、無つる引き区のつるがやや短くなりました。受粉前の葉の数は同等でした。資料は、端に近い株が裾換気の冷気にあたり、気温と地温も中央より低かったことを原因に挙げています。
5. マニュアルの手順
手順は、無つる引き栽培マニュアルのとおりです。
無つる引き栽培の手順(マニュアルより)
トンネル幅2m、子づる4本・2果どりの場合
作業はつる先側から進めます。目印棒は、株ごとのつるを見分けるために、つるの伸びに合わせて動かします。
-
トンネルの端から40〜80cmに植える
定植株間は70〜80cmです。最初の株はできるだけ端に植えます。つるを伸ばす方向のいちばん端は、1〜2株分を空けます。
-
残すつるを決め、横に流す
つる決めつるを畝と平行の向きに流します。
-
わき芽をとり、つる先を隣の株の前にそろえる
1回目長いつるを外側に置き、先端をそろえます。つる先側に目印棒を立てます。
-
5〜7日後、わき芽をとり、つるを裾へ押し込む
2回目つるはトンネル全体に広がっています。つる先は隣の株の前に置き、目印棒をつる先側へ動かします。株元側の裾を閉めて作業すると、つるや葉がトンネル内に収まります。
-
わき芽をとりながら、つるを横に置く
3回目目印棒をつる先側へ動かします。定植位置が60〜80cmなら、隣の株元につるをのせると作業しやすくなります。
-
最後のつる管理から3〜5日後をめやすに受粉
受粉2花をねらって受粉します。受粉までの日数が短いときは、最後の押し込みを弱めにし、長いときは強めにします。
試験の受粉はミツバチで行いました。2015年の受粉期間は、つる先が扇状に広がり、受粉作業に支障はありませんでした。
出典:鳥取県「新しい技術」第56集(平成30年度)別紙「無つる引き栽培マニュアル」
目印棒は、株ごとのつるを見分けるための棒です。資料は、目印棒があると摘果がしやすいとしています。マニュアルのQ&Aには「なくてもよい」という声も載っています。ただ、2花目に着果するとつるが交差し、どれを摘果するか迷うことがあります。そのため、あったほうがよいとしています。
6. 導入するときに確かめること
資料の注意事項とQ&Aから、現場で確かめることを並べます。
作業はつる先側から進める
作業に慣れていない人では、時間が減らない例がありました。2016年の作業者Cは、つる先側から作業することに慣れていませんでした。資料は、作業の内容をよく理解してから行うよう注意しています。
つるが茂る前に管理する
つるが茂った状態では、作業の効率が落ちます。作業が遅れないよう、早めに管理します。
定植位置は40cmと80cmで一長一短
40cmに植えると、作業する場所が広く、つるをまっすぐ置けます。ただし、80cmより生育が1〜2日遅れます。地温と気温がやや低いためです。80cmは生育は良いものの、作業はしにくくなります。
株数は慣行と同じにできる
なるべく端から植え、いちばん端の空いた場所にも1株植えれば、慣行と同じ株数になります。
防除は慣行の防除暦どおり
注意事項では、病害虫の防除は慣行の防除暦に準じるとしています。3年間の試験は防除暦どおりに防除し、無つる引きで病害虫が問題になったことはありませんでした。防除の回数を減らした場合は、調べていません。
つる先側から裾換気すると絡むことがある
つる先側から裾換気をすると、つる先が風にあおられ、隣の株と絡むことがあります。
ハウスや傾斜地でもできる
試験はトンネルで行いましたが、ハウスでもできるとしています(ハウスのデータは資料に載っていません)。傾斜のあるトンネルでは、つる先を上に向けて誘導します。下向きは調べていません。
仕立て方と、着果しなかった株
試験場では、4本の2果どり、5本の3果どり、3本の2果どりで行っています。3本の2果どりに省力整枝を組み合わせると、省力の効果が高いとしています。着果しなかった株は、つるを株元の方へS字(M字)に寄せ、もう一度受粉します。
まとめ
鳥取県園芸試験場の試験では、無つる引き栽培で整枝・つる管理の時間が慣行より11〜35%減りました。果重・糖度・空洞果は慣行と同等です。
ただし、つる引きは慣行の作業時間の26%で、残りの74%はわき芽とりです。無つる引きだけの区では16%減、2回目のわき芽とりを省くと30%減でした。
作業に慣れていない人では、時間が減らない例もあります。始める前に、マニュアルで作業の向きと目印棒の使い方を確かめてください。
出典・参考資料
- 鳥取県「スイカのトンネル栽培における整枝作業の改善~無つる引き栽培法による省力化~」(新しい技術第56集・PDF)(作業時間、果重・糖度、試験の条件、注意事項)
- 鳥取県「別紙:無つる引き栽培マニュアル」(新しい技術第56集・PDF)(手順、省力整枝のやり方、Q&A)
- 鳥取県「新しい技術第56集(平成30年度)」(掲載ページ)