結論
オランダの生物防除メーカーKoppert(コパート)は、天敵(害虫を食べる益虫など)をドローンで放飼する装置「Natutec Drone Release System」を公式サイトで紹介しています。メーカーの説明では、天敵を広い面積に均一に、手作業より大幅に少ない労力で放せるとしています。処理能力は「1時間あたり8ha(イチゴで測定)」とされています。一方、天敵の生存率や殺虫剤の削減率について、製品ページの本文に具体的な数値は載っていません。日本で使う場合は、天敵が農薬取締法で農薬とみなされる点にも注意が必要です。
Natutec Drone Release Systemとは
Koppertの製品ページでは、この装置の特長として次の3点を挙げています。
- 天敵を均一に分布させられる(“Uniform distribution of natural enemies”)
- 手作業での放飼に比べて大幅に労力を減らせる(“Significant labour saving compared to manual application”)
- 天敵の品質に影響を与えない(“No impact on the quality of the natural enemies”)
用途は「広い面積に天敵をすばやく放飼すること」と説明されています。
仕組みと仕様(メーカー公表値)
- 装置には放飼する製品を入れる容器があり、作物・放飼密度・天敵の種類に応じて飛行条件を設定します。
- 飛行ルートを作成すると、ドローンは完全自律で飛行して天敵を放飼します。
- 処理能力:1時間あたり8ha(イチゴで測定、Koppert製品ページ)
- 容器(原文は dosing pot/drum)の容量:13リットル
- 散布範囲(原文は Range):高さ・製品・条件により1〜10m
- 操作は訓練を受けたドローン操縦者が行うこととされています。
ドローンによる天敵放飼の利用例
Koppert USは2020年1月14日付のニュースで、ドローンの下に取り付ける天敵の放飼装置「Natutec Drone」の発売を発表しています。同ニュースによると、露地イチゴでの試験などを経て、イチゴ畑のナミハダニ対策に使う天敵製品Spidexをこの装置で散布できるとしています。提供はまず試験を行った米国から始め、ほかの国へは現地の条件に合わせた調整と試験の後に広がる見込みとしていました。今回確認した資料には、現在の製品ページの「Natutec Drone Release System」との関係は書かれていません。
Koppertの2024年4月4日付ニュースでは、イタリアの露地トマトでハダニが大きな脅威になっていると紹介しています。同記事によると、加工用トマトの露地栽培面積は計7万haで、天敵製品Spidexを露地で使ううえで、ドローンによる空中散布の開発が重要な要素だったとしています。また、ドローンの活用はブラジル、米国、カナダ、南アフリカにも広がっており、トウモロコシ、大豆、マンゴー、マカダミアなどで使われているとしています。ただし同記事は、どの放飼装置を使ったかや、各国での用途が天敵の放飼かどうかは書いていません。
日本で検討する場合の注意
- 日本国内での販売・利用可否や価格については、今回確認したKoppert公式ページには記載がありません。導入を検討する場合は、取扱業者や地域の普及指導機関に確認してください。
- Koppertの製品ページには「自国・自州で認められた製品のみを使用すること」との注意書きがあります。日本では、農薬取締法で、病害虫の防除に使う天敵は農薬とみなされます(同法第2条第2項)。使いたい天敵製剤が国内で使えるものか(農薬としての登録など)を、販売店や普及指導機関に確認してください。
- 農林水産省のページでは、ドローンによる農薬等の空中散布は「物件の投下等」に該当し、航空法に基づき事前に国土交通大臣へ許可・承認の申請が必要と案内しています。天敵の放飼が同様の扱いになるかを含め、国土交通省・農林水産省の情報を確認してください。
まとめ
Natutec Drone Release Systemは、天敵を広い面積に自律飛行で放飼するKoppertの装置で、メーカーは均一な分布、省力化、天敵の品質への影響がないことを訴求しています。公表されている具体的な数値は、処理能力(1時間8ha、イチゴで測定)、容器容量13L、散布範囲1〜10mです。省力化や農薬削減の程度は、作物や圃場条件、防除体系全体によって変わるため、導入前に個別の確認が必要です。
出典・参考資料
- Koppert「Natutec Drone Release System | Application of Natural Enemies over Large Areas」
- Koppert US「Lift Off for Koppert Innovation」(2020年1月14日)
- Koppert「Partnering with growers on innovative applications for biological crop protection」(2024年4月4日)
- 農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」
- e-Gov 法令検索「農薬取締法」
※本記事は公開情報をもとに作成したもので、製品の性能や効果を保証するものではありません。導入や防除の判断は、メーカー・販売店・地域の普及指導機関等にご確認のうえ行ってください。