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シャインマスカットを根域制限で育てると、何年目から採れるか——福島の実証は2年目1.1t、3年目3.1t/10a

遮根シートの上に少ない土を盛り、根の広がる範囲を限る「根圏制御栽培」。福島県伊達地域の実証では、シャインマスカットが定植2年目に10aあたり1.1t、3年目に3.1tとれました。導入費は10aで約614万円(県の経営モデル)で、雨よけ施設と自動かん水が前提です。かん水量と基肥の栃木県の試験、土の量の宮崎県の試験、短梢剪定で早く樹形を作る山梨県の試験もあわせて整理します。

イメージ画像。パイプハウスの中で、黒いシートで囲った細長い畝からブドウの幹が立ち、棚の針金に沿って枝を横に伸ばしている。畝の上に点滴チューブが通り、黄緑色の房が下がっている
※画像はイメージです

シャインマスカットは、苗を植えてから収穫できるまでに年数がかかります。福島県伊達地域の実証では、慣行栽培のシャインマスカットは定植2年目に収穫がなく、3年目も10aあたり0.1tでした。

同じ実証で、遮根シートの上に少ない土を盛り、根の広がる範囲を限る「根圏制御栽培」にすると、2年目に1.1t、3年目に3.1tとれました。資料はこれを「定植2年目で成園化」と書いています。

ただし、県の経営モデルでは導入費が10aあたり約614万円です。雨よけ施設と自動かん水装置が前提になります。

根圏制御栽培は、定植2年目から収穫できた

福島県伊達地域の実証。10aあたりの収量(t)。令和元年5月3日に定植

慣行栽培のシャインマスカットは、2年目が0t、3年目が0.1tでした。根圏制御栽培では、同じシャインマスカットが2年目に1.1t、3年目に3.1tとれています。

※根圏制御栽培は、主枝を上下2段に置く「V字型2段仕立て」と組み合わせた結果です。1か所の実証の2年分です。

出典:福島県県北農林事務所伊達農業普及所「ぶどうの根圏制御栽培及びV字型2段仕立てによる早期成園化と省力化」 表1(令和2・3年)をもとに作成


1. 根圏制御栽培とは

根圏制御栽培は、遮根シート(根を通さないシート)の上に少ない量の培土を盛り、苗を密に植える栽培です。根域制限栽培とも呼ばれます。

福島県の実証では、自動かん水装置で、生育期間の土壌水分を一定に保ちました。棚はY字棚で、主枝を上下2段に置く「V字型2段仕立て」と組み合わせています。面積は10aで、令和元年5月3日に定植しました。

県の経営モデルの前提は、10aあたり167本、植える間隔は2m×3mです。


2. 福島の実証でとれた量

シャインマスカットは、根圏制御栽培で定植2年目に1.1t、3年目に3.1tでした。 慣行栽培は、2年目が0t、3年目が0.1tです。

資料は、2年目の収量を「慣行栽培成園並」とし、慣行栽培の6〜10年目に当たるとしています。3年目は前年の1.7〜2.8倍で、シャインマスカットは2.8倍でした。

ほかの品種の2年目と3年目は、ナガノパープルが1.8tと3.0t、クイーンニーナが1.2tと2.3tです。品種によって、とれる量は違います。

果実は、粒の大きさと色づきが良好でした。割れやすいナガノパープルでも、裂果率は0〜1%です。資料は、土の水分をコントロールできるので、裂果などの障害が減ると期待しています。

作業時間も比べています。定植2年目の根圏制御栽培と、慣行栽培(長梢仕立ての成木)で、同じ収量あたりの労働時間を比べると、根圏制御栽培が15%少なくなりました。剪定の作業が減ったためです。

実証した農家は、成園になった令和3年の収量を10aあたり2〜3tとし、満足していると話しています。

これは福島県の1か所、2年分の結果です。


3. 導入費と、県の経営モデル

伊達農業普及所は、10aの慣行の巨峰の代わりに、根圏制御栽培でシャインマスカットを植えた場合の経営モデルを出しています。

福島県の経営モデル:巨峰の代わりに、根圏制御でシャインマスカットを植えた場合

10aあたり。根圏制御は定植3年目の想定。伊達農業普及所の試算

モデルの3年目の生産量は2.2tで、実証の3年目の実績(3.1t)より少なく置いています。導入費は合計6,136,692円です。

見る点 慣行の巨峰 根圏制御のシャインマスカット(3年目) 資料の注記
生産量
10aあたり
0.9t
2.2t
想定の値
実証の3年目の実績は3.1t
単価
1kgあたり
915円
1,632円
品種で単価が変わる
販売額
824千円
3,590千円
単価 × 生産量
経営費
568千円
うち減価償却費 296千円
1,416千円
うち減価償却費 813千円
減価償却費を含む
農業所得
256千円
2,174千円
2年目で所得がプラス
資料は、定植2年目で慣行と同じくらいの収量になるとしている
導入費
合計
—
6,136,692円
Y字棚 1,583,721円、雨よけ施設 1,613,403円、根圏施設 918,300円、かん水施設 1,520,268円、種苗費 501,000円
前提 雨よけは1年目から
べと病対策のため、定植1年目から雨よけ施設が必要

※前提は、労働力1名(臨時雇用1名)、植栽本数167本/10a、植栽距離2m×3m。耐用年数は、Y字棚と雨よけ施設が14年、かん水施設が7年、根圏施設(培土、ビニールシート等)が5年、種苗が15年です。

出典:福島県県北農林事務所伊達農業普及所「ぶどうの根圏制御栽培及びV字型2段仕立てによる早期成園化と省力化」 経営モデル(令和2年の資料)をもとに作成

導入費の合計は6,136,692円です。内訳は、Y字棚が1,583,721円、雨よけ施設が1,613,403円、根圏施設(培土、ビニールシートなど)が918,300円、かん水施設が1,520,268円、種苗費が501,000円です。

モデルの定植3年目は、生産量2.2t、単価は1kgあたり1,632円、販売額は3,590千円です。経営費は1,416千円で、このうち減価償却費が813千円です。農業所得は2,174千円になります。慣行の巨峰は、生産量0.9t、農業所得256千円です。

モデルの生産量2.2tは、実証の3年目の実績3.1tより少なく置いた値です。資料は、品種によって単価が変わるとも書いています。

根圏施設の耐用年数は5年で計算されています。Y字棚と雨よけ施設の14年より短くなっています。


4. 水と肥料、土の量:栃木と宮崎の試験

根の範囲を限ったときの、かん水の量、基肥、土の量は、栃木県と宮崎県が試験しています。

かん水の量(栃木県)

栃木県農業試験場は、根圏制御栽培のシャインマスカットで、実がついてから収穫までの1日のかん水量を、1樹あたり24〜54Lの4段階で比べました。1粒の重さがいちばん大きくなったのは、1樹あたり36Lのときです。

土の水分の割合を一定に保つ方法も、2段階で比べました。水分が高いほうが粒は大きくなりましたが、量を決めてかん水した方法の36Lには届きませんでした。

基肥の窒素(栃木県)

同じ試験場は、4年生の樹で基肥を比べました。ゆっくり効く「LP尿素」と、すぐ効く「塩安」を、窒素の量で8対2にしたとき、1粒の重さがいちばん大きくなりました。全部をLP尿素にした場合より14%重くなっています。

土の量(宮崎県)

宮崎県総合農業試験場は、盛り土で根の範囲を限る方法で、土の量を比べました。1樹あたり300Lより400Lのほうが生育はよく、ただし地植えよりは劣りました。

ポットで根の範囲を限る方法では、台木のフランがテレキより芽が早く出て、生育もよくなりました。

試験ごとに、土の量や水の入れ方の条件が違います。自分の園で何Lにするかは、県の普及所と相談して決めます。


5. 根域制限を使わずに、早く樹形を作る方法(山梨県)

山梨県果樹試験場は、根域制限ではなく、一文字整枝の短梢剪定で、早く成園にする方法を試験しました(令和元〜3年度)。

台木は、SO4、テレキ5BB、グロワール、188-08、101-14の5種類を比べています。副梢を使って樹を広げると、2年生で主枝が7mを超え、3年生でほぼ完成した樹形になりました。

ただし、樹の勢いが落ち着き、初めて実をつけた年の房の数は少なくなりました。


6. 導入する前に確かめること

福島県の資料からわかる前提は、次のとおりです。

  • 雨よけ施設は1年目から必要です。 べと病の対策のためです。
  • 自動かん水装置で、土の水分を一定に保ちます。 実証は、かん水装置を含むシステムで行われています。
  • 根圏施設は5年で計算されています。 培土やシートの更新を、費用に見込んでおきます。
  • 結果は1か所、2年分です。 品種によって、とれる量が違います。

導入するかどうかは、県の普及所や、根圏制御栽培を入れている産地に、設備と管理の手間を確かめてから決めます。


まとめ

福島県伊達地域の実証では、根圏制御栽培のシャインマスカットが、定植2年目に10aあたり1.1t、3年目に3.1tとれました。慣行栽培は2年目0t、3年目0.1tです。

県の経営モデルでは、導入費は10aあたり約614万円です。雨よけ施設は1年目から必要で、自動かん水装置で土の水分を一定に保つことが前提です。

かん水の量、基肥、土の量は、栃木県と宮崎県の試験で条件が違います。まずは県の普及所に、導入した園の設備と、かん水の決め方を聞くところから始めてみてください。


出典・参考リンク